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機能性尿失禁とは?看護計画を立てる方法

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皆さんは、機能性尿失禁をご存知でしょうか?老人福祉施設勤務をしている私は、患者さんの尿失禁や尿汚染は常に発見し、その都度対応方法を介護員や医師と相談します。そこで、機能性尿失禁についての原因や対策方法、又、残尿測定やトイレ誘導への工夫をご紹介いたします。

そもそも機能性尿失禁とは何か?

機能性尿失禁とは、排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁です。 たとえば、歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいは認知症のためにトイレで排尿できない、といったケースです。認知症の場合は、トイレに行くと言う行為を忘れてしまうケースも有ります。その他に、疾患が原因で脳梗塞後遺症や前立腺肥大症等の疾患で、尿意は感じる時が有るが尿失禁や尿漏れをしてしまうケースも機能性尿失禁に入ります。

認知症患者さんの機能性尿失禁対策計画

内服薬が有れば確認を行う

 

認知症患者さんの機能性尿失禁対策計画を立てるには、まず内服薬の確認からスタートします。その中で頻尿や尿量を増やしてしまう作用の有る薬を探します。心疾患が有る人が浮腫が酷くてよく内服している事が多いお薬「利尿剤」です。利尿剤は、体内に溜まった水分を出すお薬です。浮腫が有る患者さんは、体内に水分が溜まって出し切れていないため起こっています。医師は「利尿剤」を処方している事が多いです。「利尿剤」は体内の溜まった水分を尿で出す効果が有ります。つまり尿量が増えたり、頻尿になる事が多いです。「利尿剤」を1日何錠飲んでいるのか?どんな作用なのか?等の確認をしましょう。

尿失禁記録を付ける

よく介護員から「○○さん、すごいオムツから尿が漏れていて・・」「トイレに間に合わなくて」と言う報告を受けた事が有ります。こう言う記録はこまめに記録に残す必要が有ります。記録は最低でも1週間は付ける必要が有ります。記録を残す事で「どのタイミングでトイレ誘導の声掛けをしたら良いのか?」「オムツ交換の時間は少し早めた方が良いか?」等、排泄介助方法を考える事が出来ます。

オムツを辞めてトイレに行くと言う習慣を身に付けさせる

認知症患者さんは、初めに言ったとおりトイレに行くと言う動作を忘れています。しかし、認知症だが歩行が出来ている患者さんにオムツを着用させたらどうなるか?「折角、歩けているのに寝たきりになってしまう!」「ADLが低下してしまう」と思われる人が多いと思います。トイレに行くと言う動作を介護員や看護師が患者さんに思い出して頂けるような工夫が必要になります。私自身が行った工夫は、ベッドにいつもいる認知症患者さんから「動くのが面倒だ」と言われてしまいベッドの傍にポータブルトイレを設置しました。患者さんの目に見える場所に設置した事で、患者さんからも「あれは何だ?」と聞かれた事が有ります。私は「近くにトイレを置いてみたんです」と話しました。「そうか。近くていいな」と、その患者さんが話されてポータブルトイレをその日から使用していました。すぐにトイレに行くと言う動作は、とても難しい事です。認知症患者さんのペースに合わせながら行う事が重要になります。

脳梗塞後遺症、前立腺肥大患者さんの機能性尿失禁対策計画

前立腺肥大症や脳梗塞後遺症の患者さんには、頻尿や尿漏れは常に有ります。まずは対策を立てる前に、認知症患者さんの対応方法と同様に内服薬の確認と尿失禁記録を付ける事から始めます。そして認知症患者さんと違う部分は、専門医への相談です。

泌尿器科医師への相談

 

泌尿器科医への相談は、私自身も行った事が有ります。前立腺肥大症の患者さんの尿失禁記録を持って泌尿器科医に確認して頂きました。勿論、患者さん自身にも残尿感の有無を泌尿器科医に話して頂きました。医師からはあるお薬を処方されたのです。それが「α¹阻害薬・ユリーフ錠」です。「α¹阻害薬って何?」「どんな作用が有るの?」と疑問に思う人が多いと思いますが簡単に言えば、肥大してしまった前立腺をリラックスさせて柔らかくして排尿をスムーズにする効果が有るお薬です。そうする事で、残尿感が消失しスッキリ感が出ます。α¹阻害薬には種類が有ります。病院によって処方するお薬が異なって来ます。

残尿測定を行う

 

泌尿器科医の中には「初めに残用測定してみて下さい」と指示を出く医師もいます。「残用測定とは何だ?」とわたしも初めは思いました。残用測定とは、残尿測定器を使用した膀胱内に溜まった尿を測定する機械を言います。上の写真の機械は、「ゆりりん」と言う残尿測定器です。使用方法は簡単です。

この残用測定器に出る数値を1週間記録に付けます。イラストでは、62と出ています。つまり、膀胱内に、62ccの尿が溜まっていると言う事になります。これにプラスして、一日の飲水量も記録に付けると良いでしょう。

機能性尿失禁でのオムツやリネン使用方法

オムツやリネンには、尿失禁対策のために作られた物品が有ります。

防水シーツ

防水シーツは、別名横シーツと言われる物で胸下部から膝位までに敷くようになります。防水なので尿を弾く事は当然です。この防水シーツは、二枚購入し対応しています。一枚が汚れても洗濯している時に、もう一枚有れば安心と言う考えだからです。

尿量が多い人用パット

これは一部の尿量が多い人用のパットですが、パットは業者によって尿量が多い人用パットが有ります。吸収量も普通のパットよりも多いのが特徴です。このパットを使用した尿量測定も出来ます。排尿後のパットを測りを使用して重さを測る方法です。残尿測定を嫌がる患者さんがいる場合はこの方法で尿量測定を行います。

ポータブルトイレ

ポータブルトイレは福祉用具としてレンタルが可能です。ベッドの傍に設置し掃除も簡単に出来ます。最近では普通のトイレと同様に水を流せるポータブルトイレが有ると聞いた事が有ります。排泄トレーニングやリハビリ感覚でポータブルトイレを使用すると良いでしょう。

尿器の使用

男性患者さんの中では「自分で排泄する。処理も自分でする」と言う気持ちの人がいます。ベッド上での排泄をしたい患者さんのために尿器を勧めた事が有ります。一度尿器を勧めてみると初めは「いいのか?ベッドで用をたして・・」と言われました。徐々に慣れて行き、その患者さんは車いすの患者さんで「尿器に溜まったのは、俺が捨てっから」と話されてトイレに尿をご自身で破棄するようになりました。そして、現在、尿器を使用せずにトイレで排泄が出来るようになりました。この尿器は、患者さんの意欲を向上させる物でも有ります。

排泄援助に関しての注意点としてはいけない行為

尿失禁を責めない

トイレに間に合わないで失禁してしまう失敗やパット交換したばかりなのに、ズボンまで汚染していたと言うケースは有ります。「またですか!」「何で失敗するんですか!」と言う言葉や「○○さんがおもらしした!」と大声で叫ぶ行為は、虐待に入ります。

もし尿失禁や汚染している患者さんを発見した場合は、「ごめんなさいね。遅くなってしまって。ズボン冷たいね。気持ちが悪かったね」等の声掛けを心掛けましょう。

パットの重ね使いは禁止です

オムツやパットは、施設だと患者さんの負担で購入されている事が有ります。重ねて使う事で、患者さんや患者さんの御家族への経済的負担にも繋がります。そして、一番悪い影響が出るのは患者さんの皮膚です。何枚もパットを使用する事で、密封された状態になり、皮膚トラブルや褥瘡の悪化にも繋がります。正しい使い方を心掛けましょう。

 

環境を変えない

ポータブルトイレの場所を変えてみたり撤去してみたりする事は、患者さん自身がパニックになる原因を作ってしまっています。「トイレがいつもの所に無い」となれば患者さん自身もトイレを探して歩き回ります。転倒事故やトイレに間に合わないで失禁をしてしまう事に繋がります。環境を変える際は患者さんと十分に話し合ってから変えるようにしましょう。

排泄援助や失禁対策で必要になって来る事は?

オムツ業者の指導を受ける

オムツを購入している、オムツの配達業者が来ると言う事はいつもオムツを発注している業者が有ると言う事です。そこの業者にオムツの正しい着け方を指導してほしいと問い合わせると、すぐに対応してくれる事が多いです。実際に、私自身もオムツ業者に連絡してオムツとパットの正しい当て方の指導を受けました。オムツやパットの当て方の他に吸収量や、サイズが合っていないキツイオムツを着用したらどんな感じか等、実際に職員も衣類の上からオムツを着用して感想や意見交換を行います。他の職員の意見を聞ける機会にもなり勉強になります。

排泄担当の係や看護師の設置

排泄担当の係や看護師を設置する事で、患者さんがどのようなオムツやパットを使用しているのか?又は、どんな利尿剤や下剤を内服しているのか等の把握が簡単に出来るようになります。便秘傾向の患者さんがいた場合、看護師が内服状況を確認し医師に下剤の処方を依頼する事や、下剤が効きすぎて医師に下剤の調整を依頼する事もスムーズに出来ます。私自身が排泄担当係の看護師で、下剤のコントロール業務を担当しています。このように係を設置する事で医療機関との連携もスムーズになります。

スキントラブルの予防

スキントラブルは寝たきりの患者さんだけでは有りません。オムツやパットの間違えた使い方で褥瘡になってしまう事も有ります。こまめな皮膚の観察が必要になります。

まとめ

排泄と言う行為は、生活の中で常に行っている事ですが高齢になったり、体に障害が有ればその行為が困難になります。そのお手伝いやサポートを行うのが看護師や介護員です。健常者から見れば簡単な事ですが、尿失禁対策計画を立てる方法は患者さんの動作レベルに合わせた計画を作成する必要が有ります。目標は高くでは無く、患者さんと話しながら決めてみてはどうでしょうか。

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