入院してしまった場合、入院説明で病院内の設備や一日の流れを説明してくれる看護師さんがいます。その看護師さんが、とても優しくて親切だと「この看護師さんに看護してもらいたい」と言う気持ちになる患者さんは多いです。入院から退院まで、又は入院から看取りまで決まった患者さんの看護を行う看護師を「プライマリーナース」と言います。今回はこの「プライマリーナース」の業務とメリットとデメリットをご紹介いたします。そして看護方式には、プライマリーナーシングの他にも有ります。病院によって取り入れられている看護方式が異なりますので、看護方式についてもご紹介致します。
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プライマリーナーシングとは?
プライマリーナーシングとは、一人の患者さんを入院から退院又は看取りまでを担当するシステムを言います。担当となるナースをプライマリーナースと言い、担当患者さんの看護計画を責任を持って立てて看護ケアを提供します。
チームナーシングとは?
チームナーシングとは、一つの病棟にいる看護師を二つのチームに分けてそのチームで一定の患者さんを担当しチームで看護ケアを行うシステムを言います。チームには、リーダーがおりチームでカンファレンスを行い患者さんの看護計画を立てます。プライマリーナーシングと違い、チームで協力するシステムとなります。
プライマリーナースの業務
患者さんの情報収集
プライマリーナースが最初に行う事は、カルテからの情報収集を行います。患者さんの名前、性別、疾患、生活歴を知る事と今回の入院がどんな目的の入院なのかを理解する必要が有ります。担当医からの情報もきちんと聞く必要も有ります。
患者さんとの顔合わせ・入院説明
ここで患者さんや患者さんの御家族と会います。きちんと自己紹介を行い、病院内の一日の流れを説明します。主に食事の時間や面会の時間、医師の回診の時間や入浴日や検査日、又リハビリが必要で入院した患者さんの場合はリハビリを行う曜日も説明します。糖尿病で血糖コントロールのための入院の場合は間食禁止等も指導する事も有ります。
病院内の設備の説明
プライマリーナースは、担当する患者さんや患者さんの御家族へ病院内の設備についても説明します。トイレの場所や検査室やリハビリを行う場所、売店の場所を説明する事も有ります。最近の病院の売店はシーツや下着等必要な物品が売っています。患者さんご家族へは、売店に必要な物品が有る事等を説明します。
チームの看護師と情報交換する
プライマリーナースは、チームの看護師へ入院した患者さんの情報交換を行います。患者さんの疾患、ADL状況等の情報を交換します。その患者さんに褥瘡や皮膚疾患が有る場合は処置方法をチームで統一する必要も有ります。何故、情報交換が必要なのか?それはプライマリーナースは、勤務を休む時も有ります。プライマリーナースが不在な時に他の看護師が看護ケアを行う必要が有るためです。内服薬、処置の有無、リハビリの有無、今回の入院の目的、生活歴や家族構成等をカルテやフェイスシートを見ながら情報交換を行います。勿論、フェイスシート(患者さんの情報書類やプロフィル)はプライマリーナースが作成します。
患者さんの看護ケアを行う
プライマリーナースは当然、患者さんの看護ケアを行います。患者さんの訴えを聞きながら看護ケアを行いカルテに記録を残します。その日のバイタル測定や、その患者さんの看護やケアはプライマリーナースが行います。
転院や施設に移る際の対応
患者さんが、他の病院や施設に移る事も有ります。特に高齢者の場合、症状が落ち着けば老人ホーム等に移る事が多いです。治療から介護に変わると言う事です。プライマリーナースは、患者さんが移動する先の病院や施設に患者さんの情報を書いた書類を渡す事が必要になります。既往歴や入院したキッカケになった疾患の経過、服薬状況、ADL状況を細かく書類で作成します。褥瘡が有る患者さんの場合は褥瘡の写真を添付する事も有ります。又、施設に移った際に、患者さんは当然入院していた時と同様に薬を飲んでいる事が有ります。施設には薬は当然有りませんので担当医に依頼し2週間分の内服薬を処方して頂くよう話す必要になります。患者さんが移った先でも安心して生活を送れるようにプライマリーナースには責任が有ります。
退院時の指導
患者さんが病状が落ち着けば自宅に帰る事が有ります。つまり退院し自宅療養や通院治療に切り替わると言う事です。プライマリーナースは、退院後の生活指導や定期通院が重要で有る事や薬の飲み方を指導します。勿論、体調が悪い時や症状が出た時等の対応方法を患者さんや患者さんの御家族に話します。血糖測定やインスリン注射、胃瘻注入や吸引等を自宅で行う事も有り、その際はご家族に指導を行います。
看取り、最期のお別れの時の対応
患者さんには、治る患者さんもいれば当然治らないでそのまま病気が進行して最期を迎える患者さんもいます。プライマリーナースは当然、最期を迎えた患者さんの対応を行います。エンゼルケアーをご存知でしょうか?私の施設にも有りますが、エンゼルキットと言う物を使用します。エンゼルケアとは、亡くなった患者さんを綺麗にする事です。綺麗に温かいタオルで体を拭きます。そして血色が無い顔に化粧を施します。健康だった時の肌の色に近付けるのです。プライマリーナースは患者さんの最期に立ち会って見送るまでが仕事なのです。
病室の片づけ
患者さんがいなくなった病室。病院では清掃員がいて病室の掃除や片づけを行いますが、清掃員がいない病院はプライマリーナースが掃除を行います。次に入る患者さんのためにも病室を綺麗にする必要が有ります。
プライマリーナースのメリット
患者さんの最初から最期までを担当する事が出来る
プライマリーナースは、一人の患者さんが入院1日目から退院又は看取りまで担当する事が出来ます。患者さんの日々の状態や治療状況、疾患の経過を把握する事が出来て患者さんとの触れ合う機会が増えます。
プライマリーナースが不在でも他の看護師が患者さんを担当する
プライマリーナースでも、お休みは有るのは当然です。その際は他の看護師がプライマリーナースが作成した看護計画に基づいて看護ケアを行います。
プライマリーナースのデメリット
看護技術と知識、そして責任能力が必要となる
プライマリーナースは、当然知識や技術は必要になります。そして入院から退院又は看取りまで看護ケアを行うと言う責任能力が必要となります。チームナーシングと違い自分で患者さんの状態を把握し看護計画を立てる必要が有ります。患者の状態が変われば看護計画の見直しと作成が必要となります。責任はとても大きくなります。
未経験看護師や新人看護師には抵抗が多い
新人看護師や看護師免許を取得して入社したばかりの看護師は、プライマリーナーシングシステムに戸惑いや不安を感じる事が有ります。そんな看護師さんは安心して下さい。大抵の病院では、入社してからすぐに独り立ちさせると言う事は有りません。先輩看護師と一緒に患者さんを受け持ったり一緒に看護計画を立ててカンファレンスを行います。新人看護師さんは初めての経験が多いです。病院の環境に慣れるので精一杯な看護師さんも多いです。そのため先輩看護師の協力とサポートが必要になります。
責任重大なため、休めないと言うプレッシャーが有る
プライマリーナースは一人の患者さんを責任を持ち担当するため「私が休んだら、他の看護師に迷惑をかけてしまう」と思ってしまう事が有ります。それは、休んで頂いて大丈夫です。プライマリーナースが不在の場合は他の看護師が担当する決まりなので安心して休みの日や体調不良時は休んで頂いて大丈夫です。そのための看護師を、ヘルプ看護師と言います。
チームナーシングやプライマリーナーシングの他にも看護方式はあるのか?
日本独自の看護方式!モジュールナーシング
チームナーシングやプライマリーナーシングはアメリカで考えられた看護方式です。の本独自に考えられた看護方式も有ります。それは、モジュールナーシングです。モジュールナーシングとは、一つの病棟に所属する看護師を二つ以上のチームに分割します。そしてそのチームを更に数名ずつのモジュール(単位)に分けます。そのモジュールで一定数の患者さんの、入院から退院まで担当します。一つのモジュールが担当する患者さんの数はチームナーシングより少なくなります。そのため、看護師は担当する患者さんに集中して関わる事が出来ます。又、複数の看護師で構成されているため、プライマリーナーシングよりも一人の看護師にかかる責任や負担が分散されます。モジュールナーシングは日本独自のシステムです。欧米では看護師の確保は簡単に出来ますが日本は看護師確保が難しいです。モジュールナーシングは、そのために考えられた看護方式となります。
災害医療ナーシング、医療チーム
自然災害時に、病院から避難所などに派遣される医療チームを言います。医師と看護師2~3名で構成されており、このチームに管理栄養士や薬剤師が入る事が有ります。最近ではドクターカー医療班と言うシステムを使っている病院も有り、ドクターカーの場合は医師と看護師2名で構成されている事が多いです。少ない人数での医療チームでもあり、看護師は医師の指示に従い臨機応変に対応出来る知識と技術を身に付ける必要が有ります。
まとめ
現在、日本は医師や看護師が不足し確保が難しい事が多いです。その病院やしせつによって取り入れられている看護方式が違い看護師から見て楽に感じてみたり負担に感じる事が有ります。看護師が職場から離れないように、看護師が負担にならない看護方式が必要となって来ると思います。残業や業務が多いと言う不満が無くなる事も私自身も強く思っています。